透明なエレベータで男が昇って行った。 夜は、 たぶん、何も映さない鏡のようで 街灯が照らす石畳の、その次の街灯までのわずかな暗闇に たたずんでいた女の 黒く、 黒く、 濡れた髪を思いださせたんだろう。 外国タバコの、安く鼻に残る香りに 舌を絡めて 倦怠を味わった。 女の顔は覚えていない。 舌の渋味は何度でも、思い出せる。 それが証だったのだから。 ベッドの端に座って下着を付けた、その女の後姿を 灰皿の中に捨てた。 燃え残る火を苦い唾液で消した。 エレベータがフロアを過ぎる度 ワゴンから漏れる光が扉の影を 鳥篭のように映し出す。 夜の靴音が刻むtangoを まどろっこしいlargoで包み込む、 感情のようなもの。 男が道の上にどさりと落ちた。 #
by diamonds-pearls
| 2006-06-19 01:30
| music
夜の憂鬱の中に 足を差しいれた。 やわらかな液体のような闇に 沈んでいく。 手足は もう、私のものではない。 低いベースの音が心地よく。 そう、 もう、何も見たくない。 やわらかな液体のような孤独の中に 私は私を忘れていく。 夜の深い憂鬱の中へ。 #
by diamonds-pearls
| 2006-05-05 19:13
| music
線路の上をループする、この電車みたいに 毎日が上滑りしてゆくの。 くるっくるっくるっくる 無味乾燥な音を立てて、過ぎて行くだけ。 ガッコの帰りにレコード屋に寄る。 友達は 「私も」 ってついて来るけど 彼女の好きなアイドルグループなんて そこの店には置いてないよ。 くるっくるっくるっくる って、私は体を揺すって、確かめたいの。 私はいったい誰なのか。 いったいどこにいて、なにをしているのか。 だけど、くるっくるっくるっくるって 見えない指先で煙に巻かれて いつも自分を見失ってしまう。 レコード屋の店員の男の子は いつも私を見ている。 うそ。 私は分かってる。 ふとした拍子に目が合うのは 本当は、私がいつも見つめているから。 ねえ 人生なんて 音楽がなければ ただ、黒いターンテーブルが回っているだけ。 迷子でいるのは、もう、いやだ。 あなたのその針で、私の音楽を鳴らしてよ。 #
by diamonds-pearls
| 2006-02-14 16:28
| music
昨日、悲しい夢を見た。 あなたが私のところにやってきて 私の心に降れる夢。 羽のようだった。 私はもう、そんな夢は見ないと思っていた。 #
by diamonds-pearls
| 2006-02-05 09:54
| poetry
サテンのシーツが肌に冷たく、体温を奪う。 でも、女が肩をすくめるのは、そんな理由じゃない。 見慣れない風景だ、と感じているからだ。 重なる男の肌は、どうして誰も熱いのだろう。 さっきまで車をとばしていた砂漠を思い出す。 『ふたつの三日月にぶらさがって 道化が笑っている。 それは、あなたと私に似ていて 満ちることを知らない月』 吐息の向こうに、瑞々しい木々の匂いがする。 目をつむれば わずかな風にこすれあう葉の音が、耳のすぐそばで聞こえる。 意識はそんな遠くにありながら ただ、手さぐりで探し始めた。愛のようなものを。 けれど、いずれにせよ オアシスを囲む石壁は、永遠を約束するものではない。 ・・・・・te amo corazon 『あなたが欲しい。 その心臓の鼓動さえ、私のもの。』 #
by diamonds-pearls
| 2006-01-29 10:55
| music
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