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MER GIRL  / madonna


 コンポストを作っていた。
否、作っていたのは庭であって、コンポストを作るのだけが目的だったわけではない。
野菜くずと落ち葉、引き抜いた雑草と剪定した枝葉、
そこに時々は米ぬかやEM菌などを加えてうっすら土をかぶせ、プラスティックのフタを閉める。
 こうして出来た堆肥のおかげで、私の庭はふっくらと柔らかで、ミミズがたくさん住み、
それを狙ってモグラが巣を作った。
 冬の寒い日でもコンポストの外側に手をあてると、醗酵する熱でほんのりと暖かかった。
中では、醗酵と腐敗とミミズやウジ、あらゆる手段で物質は土に返って行くのだ。

 女は、と大きく括っては間違いが起こるが、概して女に生まれると、他者をケアする立場になることが多い。
家族、結婚すれば配偶者や子供。
社会的な役割として、だけではない。
ケアを望む声が聞こえてしまえば、どうしようもないことなのだ。助けてくれと聞こえる声は、助けてやるまで消えないのだから。
惜しみなく愛をそそぐ、こともできる。だが、愛は惜しみなく奪う、と解釈する夜もあるのだ。

 夜、私が薄暗がりで目を開けている時、庭の片隅のコンポストでは虫達が餌を土の中に引っ張り込み、噛み砕いている。歯音が聞こえてくる。
 コンポストの中の様子は気持ちのよいものではない。
けれど、開けて、ウジや名前の知らない虫達が腐敗の中にうごめく様子を見て、

「私は大丈夫だ。まだ、私は大丈夫だ。」

そう思う時がある。
いつか、枯葉が私にかぶさり、虫が私を食べる。おぞましいそのことが、私を救う時がある。
気ぜわしくのっぴきならない関係の中で生きてゆく。自分を見失うことなく。
それは、少しむずかしい。

「MER GIRL」
 愛娘にあてた子守唄のような「LITTLE STAR」の後、この陰気な曲は歌われる。
ささやくように優しく、あきらめたようにブラブラと。妙にやすらかに。
これは、女を眠らせる子守唄なのだ。

「私は走り出した。
居場所のない家から。
とどめておけない男から。
死んでなお付きまとう母親から。
眠らない娘から。
私は走る。
喧騒と静寂から。行き交う通りから。」


私の眠らない娘が起きだすので、この辺で。
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by diamonds-pearls | 2004-12-30 02:13

閑話

 さて、取るものも取りあえず始めたブログですが、ここらでちょっと休憩を。

作りながら機能を把握してゆくということで、ちょこちょこと手を加えてきました。

 まず、以前に書いた詩や、旅の途中で書き殴ったものを、大体アップしたところ。
「Fiction D&P」など、別のページもリンクして、それから私の友人のサイトをふたつ加えました。
 「portfolio」は写真家の友人のサイトです。
かれこれ十年近く付き合っている、尊敬する人物。吉祥寺をよくいっしょにぶらぶらしてます。彼女の静かな世界をどうそ、訪れてみてください。
 「QWAN」も気が付けば10代からの友人。ジュエリーデザイナー。
彼女の作品を私も愛用しています。私の腰のTATTOの図案は、彼女の作品にヒントをもらいました。

 他にもいろいろとお友達のすてきなサイトがあるのですが、ここではぐぐっと(笑)趣味に偏っていきたいと思っています。

 それからブログも、素敵な着眼点を持つ方々と、リンクさせていただきました。
なかなかいろんなところを巡る時間がありませんが、こつこつと見つけては、リンクをさせていただこうと思います。


 音楽を勝手なイメージで解釈してゆく「music」。それでそれはいったいどんな曲なんだ?と問わないでください(笑)。

 写真と言葉の「自己コラボ」も、コンテンツ「image」として、これからアップする予定です。


スローテンポな更新になると思いますが、どうぞ、よろしくお願いします。


 
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by diamonds-pearls | 2004-12-27 23:55

フリーダ・カーロの絵の前で


心臓に子を宿す。
フリーダ・カーロの心臓には。

鼓動を打つたび、家々をノックする
死者が空から降ってくる街、
メキシコ・シティ。

こっけいな骸骨顔をして
ひからびちゃった死者たちが、
金と銀とで降ってくる。

粉っぽく。


大事なものはひとつひとつ失った。

自ら壊した物も、
奪われるようになくなった物も、
記憶ばかりを極彩色の祭壇に飾って。


女は無視される。

家の
台所と浴室の間に、
玄関の目の前に、
窓の下の茂みに、
女達は横たわって。
まるでそこにいないかのように
人は女を踏みつけ、家に入ってくる。

心臓が打つたびに。
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by diamonds-pearls | 2004-12-24 00:35 | poetry

MOTHER  /  police

 最近、抽象的なことに思いをめぐらす時間がなく、殺伐としていた。
夜、どうしても音楽が聞きたくなり、ヘッドフォンを持ち出した。Stingの「NOTHING LIKE THE SUN」。なんの期待もなく選んだCDだが、鳴った途端、あっけなく潤ってしまったことに驚く。
思考の鉱脈を掘り当てた気分。



 夜の音。
冬の朝の匂い、夏の夜の匂い、季節や瞬間にそれぞれ匂いがあるように、空間にはその時々の「音」が存在する。
夜に満ちているのは、ソプラノサックスやオーボエのような、木管楽器の少しくぐもった高い音。夜の遠いところから聞こえるように思うのは、耳の端でしか捕らえられないからだ。
曲ではない。ただ、音。

 ある男の顔。
高校生の時、岩波ホールで見た、映画「モリエール」の主演男優。フランスの前衛演劇「太陽劇団」の演出家が手がけた映画。ルイ14世時代の喜劇作家モリエールを描いた映画は、細部の汚し方が気に入っていた。
 衣装にじっとりと染み出す汗。砂漠の天蓋のようにはためく、粗末な舞台幕のサンドベージュ。
祭りの日、街頭で演じられる無言劇の、ガイコツのマスクで顔を包んだ役者の踊るような仕草。猥雑さと辛らつさ。

 その男を見ると、ろうそくの燃え止しの煙の匂いが鼻をかすめた。
祭りの終り。喧騒が過ぎて、けだるさの残る中、ひとつひとつ消されてゆくろうそくの、立ち上る一筋の煙。終息する狂気と、まだ冷めやらぬ興奮の入り混じった、一筋の細い煙。
本能的な恐怖と、抗いがたい魅力。




と、まあ、こういった感覚が、音楽を聴いているうちに溢れ出したのだ。
 以前、ドイツ中世の拷問道具についてのメルマガをやろうと企画していた。資料を探しているうちに、なんというか、モノが拷問だけに、痛いというか気持ち悪いというか、それに魅力を見出す人に(自分もそのひとりだけど)さらにウンザリしてしまって、ちょっと頓挫したままなのだ。
 また、最初はただの紹介文、あるいは拷問道具批評をしようとしていたのが、いつものごとく、思いをめぐらすうちに少しカタチを変え始めていた。
 そして、このモリエール役の俳優を思い出し、その打ち捨てていた企画に、瑞々しい潤いがあふれたのである。ただ、この鉱脈に本当に宝が眠っているのか、一鉱夫である私には知るよしもない。

ガイコツが笑っている。


 そのガイコツの笑い声が、policeの「MOTHER」である。
(やっと表題が出てきた)
Stingの印象の強いpoliceだが、一番好きなのは実はこの曲だ。

と、いう風に、曲の紹介や批評ではなく、そこから派生したイメージのようなものを書き止めてゆくのが、コンテンツ「music」なのである。
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by diamonds-pearls | 2004-12-20 02:19 | music

イルクーツク、7月




ロシア正教会の丸屋根は
7月の明るい空気を光らせ、
外壁もまだ、白く清潔なままだが
もう、鐘を鳴らす人はいない。

重い立派な木戸を開ければ、
ベンチも祭壇もなく、

代わりに
トナカイや鹿、シベリアの大きな熊、象、
ライオン、豹、狼、イタチ、ネズミ、
おびただしい数の剥製が、
多分なんの意味もなく置かれていた。

あるものは壁に、
あるものは天井から、
あるものは大きなものの腹の下に。


漆喰の剥がれを隠すかのように
甲虫と蝶、蛾が、壁を覆い尽くした。
箱にピンで留められたまま。

引き出しには、鳥。
ていねいに羽根を折りたたまれて。

祈りに頭を垂れた場所にさえ、
荒々しい骸が、捨て置かれた。
足についた土を払うこともなく。



まるで魂を積み忘れた箱舟。

どの岸も見つけられないまま、
結局、この街と共に沈んでいくようだ。
地下室の床に、イコンを散らかしたまま。


雨はまだ降らない。
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by diamonds-pearls | 2004-12-08 00:57 | poetry

mexico




牢屋付きのバスで、どこまでも走って行く。

私は牢屋に乗っているが
なぜか明るいのはメキシコの空。
乾いた土はほこりをたてるから
格子があるくらいでちょうどいいはずだ。

荒くれて、誰も口をきかない、静かな
バスに乗って、外はまぶしい光の中。
のんびりと揺られる。

バスを水色に塗ろうか。

ジャリジャリと砂混じりに
すぐに乾くだろう。

空と同じ色の牢屋付きのバス

日が暮れても、どうせ誰も走っちゃいないし
道だって真っ直ぐ。
なんだか月も明るいし。


何もなくても、うらやむことはやめようか。
何も得られなくても
格子ごしに見ることぐらいできる。

バスは走るし、運転手だっているはずだ。

格子にもたれて、私は走る。

バスの平たい背中に
ブルーはキラキラ光る。
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by diamonds-pearls | 2004-12-01 23:35 | poetry