カテゴリ:poetry( 17 )

mexico




牢屋付きのバスで、どこまでも走って行く。

私は牢屋に乗っているが
なぜか明るいのはメキシコの空。
乾いた土はほこりをたてるから
格子があるくらいでちょうどいいはずだ。

荒くれて、誰も口をきかない、静かな
バスに乗って、外はまぶしい光の中。
のんびりと揺られる。

バスを水色に塗ろうか。

ジャリジャリと砂混じりに
すぐに乾くだろう。

空と同じ色の牢屋付きのバス

日が暮れても、どうせ誰も走っちゃいないし
道だって真っ直ぐ。
なんだか月も明るいし。


何もなくても、うらやむことはやめようか。
何も得られなくても
格子ごしに見ることぐらいできる。

バスは走るし、運転手だっているはずだ。

格子にもたれて、私は走る。

バスの平たい背中に
ブルーはキラキラ光る。
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by diamonds-pearls | 2004-12-01 23:35 | poetry

私のかわいい小さな男の子



あなたのために夜をしつらえたの
柔らかな衣と
優しい歌と
よい香りのする寝具とで

私のかわいい小さな男の子

あなたの心臓を
目をつむって探すけれど
指に触れるのは
いつも自分の胸の棘だったの

私のかわいい小さな男の子

ふるえる鳩のような心臓を
そっと包むように
守ってあげようとするけれど
毎夜毎夜
あなたの手足は
しつらえのすべてを台無しにする

きっと夜が、あなたの鳩を
飛び立たせようと急かすから




何度でもしつらえよう。

だから
小さな眠りが降りてきても

私のかわいい男の子

息をするのをやめないで
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by diamonds-pearls | 2004-11-29 22:25 | poetry

モレスタ広場




港から通りを三本入ると、小さな広場がある。
コンクリートの地面は色あせて、誰もいない。
古いベンチと、曲がったゴミかごに
紙くずのような鳩。

それを見下ろす二階に宿をとった。


街へは列車で着いた。


フロントからはいつまでも
テレビの音がやまない。
厚くペンキを塗りすぎて
窓は閉まらない。

こんなに南に来ても、夜風はまだ冷たい。

と、遠吠えのような男の叫び声。

犬のように死んだのか、
犬のように、今、産まれたのか。
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by diamonds-pearls | 2004-11-29 22:18 | poetry

椅子の上の女

椅子に座り、女がこちらを見ている。

痩せた胸骨は、まるで鳥かご。

中には、壊れた機械仕掛けの鳥が住んでいて
羽根をくるくる回して、から騒ぐ。

期待に胸をふくらませ、
情熱のため、羽根ばかりが大きく。


足は、止まり木にネジで留められた。


鳥は、ゼンマイがいつ止まるのか、知らない。
巻き上げられた力の限りに
ただ狂おしく、から騒ぐ。




女は服に胸をかくし、
身じろぎもせず、そこにいるが。
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by diamonds-pearls | 2004-11-29 22:09 | poetry

蜜月


もう、私の胸を叩くのをやめておくれ。
私の胸はもうお前にすべてをやって
薄皮ばかりになってしまったのだから。

私の腕の中で、なにひとつお前を理解できない。
裏切られているのか、
それともそんな約束は、
最初の日からありもしないのか。

私が求めるようには返ってこない、
その、ものの名は、あまりに陳腐な食べ物なのだ。
胸にはかつてあふれていたが
ついにお前の口には入ることはなかった。

胸を開くたび、お前は口を閉じて
お前も私も、その食べ物で腹を満たす事はなかった。

蜜月は終ったのだ。

ただ、腕の中でお前はあばれ、
私はひとりごとのように話し掛ける。
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by diamonds-pearls | 2004-11-29 21:46 | poetry

キューバ


 空港に迎えに来たのは
 見知らぬチョコレート色の男。
 車のメーターはどれも壊れている。
 連れ去られるようなスピードで海岸線を走る。
 夕暮れのパープル。
 油田の炎。
 ガソリンの臭いにまじった
 甘ったるいラムの香り。
 バラデロ。
 パラディ、とは似て非なるもの。
 きっと天国のようなビーチと信じて。
 こんな寒い夜の闇ではなくて。
 

 寒いビーチにねそべる
 借り物のような私
 いや、この長イスや白い大きなタオルだって
 みんな借りたもの
 2ドルで


 日に何度もNOという。
 

 キューバ人には
 キューバ人の都合というものがある。
 だれでも踊りが上手いわけじゃない。
 カルデナス。
 昨夜、私は踊りたかったのに
 彼はふざけて腰をあわせた。
 不快なことだが
 私もふざけて笑った。
 ちょっとした気遣い。
 キューバ人にも都合というものがある。
 カルデナスという小さな町の
 道の小さな水たまり。
 彼の体には、小さすぎるTシャツ。
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by diamonds-pearls | 2004-11-28 06:35 | poetry

アーモンドの木



雪が降っている。
戸はもう、重く開かない、しばらくの間は。
厚く積もった雪は、この部屋を孤島にした。
ベッドの中は体温で暖かく、
まだしばらくは、食料もある。

詩人の女は、恋人たちを
果肉に包まれたアーモンドの実にたとえた。
種の中で向かい合う、一対の白い胚のようだと。
「教えて、私達のアーモンドの木はどこにあるの?」
彼女は、訊ねるばかりで
自らの成る木を見つけられなかった。

向こうの丘には一本のさみしい木があり、
その先、林檎の林の入り口を教えている。
冬の始まりには、私たちはよくそこを歩き
気まぐれに林檎を頬張った。
手のひらに入るほどの小さな林檎。
幾つかをまだ木に残して、おそらくはこの雪の下で
凍りながら土に返って行く。

この土地にアーモンドの木は育たない。
(冷たさに、根を広げることなく)

「教えて、私達のアーモンドの木はどこにあるの?」
なるほど、いつだって確かなものが必要だ。
私もさっきまで、手探りでそれを探していた。
けれど、雪がすべてをおおって
私たちの木もまた、見つけ出すことが出来ない。
(足ばかりが、シーツに絡まり)



明日、重いドアを開けて
私は外へ出るだろう。
あなたのまぶたは閉じたまま
きっと、私が靴を履く音にも気付かない。
埋もれた道を探し、川沿いに駅まで歩いていこう。
切符は列車の中で買えばいい。

列車に乗るのだ
明日こそ。
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by diamonds-pearls | 2004-11-27 20:48 | poetry