カテゴリ:poetry( 17 )

昨日の夢



昨日、悲しい夢を見た。

あなたが私のところにやってきて

私の心に降れる夢。

羽のようだった。

私はもう、そんな夢は見ないと思っていた。
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by diamonds-pearls | 2006-02-05 09:54 | poetry

時間






ほんの少し

私に苦しむ時間をあたえて欲しい。

苦しみはいらないから。


失った心を

ただ、慈しみたいの。

だから苦しむ時間を。

何も感じられないの。

過ぎていくのが速すぎて。


だから、時間を。

苦しみはいらないから。
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by diamonds-pearls | 2005-11-12 17:24 | poetry

あなたの上に

あなたの上に幸福を祈る。

あなたに喜びと祝福が、訪れるように。

もし、真実に愛というものがあるのなら
あなたがそれに触れ、
それにより、深くそして高く
あなたの魂が導かれますように。

もし、目の曇る時があったなら、
慈雨の一粒一粒があなたの目を洗い、
心により、
透明な真実の果実を見つけられますように。

私は、あなたの上に幸福を祈る。

あなたが喜びと感謝にあふれるように。


私は、あなたの上に幸福を祈る。


あなたの幸福の時、
そばにいるのが私でないとしても。
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by diamonds-pearls | 2005-10-06 00:15 | poetry

アンダルシア


そそり立つ家の合間をぬって、石だたみの路地を歩く。

強い日差しのコントラストが路地に一層黒く、影をおとす。
( 見上げれば、切り取ったように空だけが明るく )

こんなに強い光を受けて、なお、冷たい石の壁。
人の声を吸いこみ、通りに背を向ける。


午後。


一瞬の光。誰かが鏡を動かしたのか。

執拗に細い門から、そっと中庭を垣間見る。

瑞々しい光に溢れ、花の咲き誇る
閉じられた、その、中庭。

通りの者を拒み、その女の出るのを制す、
鉄門の美しいアラベスク模様。
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by diamonds-pearls | 2005-10-06 00:00 | poetry

別の人

何度もこうして向き合った。

なのに、その度に

あなたの名前も知らないことを知る。


知らされていない。

理解できない。

あなたという、別の人。


軽い絶望が、私の体温を奪っていく。
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by diamonds-pearls | 2005-08-29 00:22 | poetry

コヨーテ



昼の暑さの幽霊が、
夜のハイウェイに火の粉を立ち上がらせる。
一瞬、また一瞬に、走り、また立ち止まる。


消えたのは、女のかたちをしたコヨーテ。
( 砂埃できしむベッドより、冷たい荒れ野に背中をゆだね )


怠惰な男たちは、強い日差しに、ただ目をふせるだけ。
誰も口をきかない、静かな、モータープール。


車のライトは正直に、前だけを照らすけれど。
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by diamonds-pearls | 2005-05-01 15:09 | poetry

夜具と夜衣



深い所に落ちてゆくには

一息



吐く息だけ白く

もう戻らない鳥のように


身体だけ底まで

まどろっこしいほど、ゆっくりと


一息に



吸う息が

途中で止まるほど

かすかに震える



この夜に、でも

あなたの名前を呼んだりはしない
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by diamonds-pearls | 2005-02-20 01:48 | poetry

太古の女



子を宿す時、私は太古の女だ。
内なる呪術に従うのみ。

子を宿した女がしあわせだと
誰が言っただろうか。
命を宿すことは、死を宿すことだ。

しかし、

満ちているのは喜びと力。
静かに立ち上がる呼吸。

静かに、とても静かに。
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by diamonds-pearls | 2005-01-11 21:57 | poetry

フリーダ・カーロの絵の前で


心臓に子を宿す。
フリーダ・カーロの心臓には。

鼓動を打つたび、家々をノックする
死者が空から降ってくる街、
メキシコ・シティ。

こっけいな骸骨顔をして
ひからびちゃった死者たちが、
金と銀とで降ってくる。

粉っぽく。


大事なものはひとつひとつ失った。

自ら壊した物も、
奪われるようになくなった物も、
記憶ばかりを極彩色の祭壇に飾って。


女は無視される。

家の
台所と浴室の間に、
玄関の目の前に、
窓の下の茂みに、
女達は横たわって。
まるでそこにいないかのように
人は女を踏みつけ、家に入ってくる。

心臓が打つたびに。
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by diamonds-pearls | 2004-12-24 00:35 | poetry

イルクーツク、7月




ロシア正教会の丸屋根は
7月の明るい空気を光らせ、
外壁もまだ、白く清潔なままだが
もう、鐘を鳴らす人はいない。

重い立派な木戸を開ければ、
ベンチも祭壇もなく、

代わりに
トナカイや鹿、シベリアの大きな熊、象、
ライオン、豹、狼、イタチ、ネズミ、
おびただしい数の剥製が、
多分なんの意味もなく置かれていた。

あるものは壁に、
あるものは天井から、
あるものは大きなものの腹の下に。


漆喰の剥がれを隠すかのように
甲虫と蝶、蛾が、壁を覆い尽くした。
箱にピンで留められたまま。

引き出しには、鳥。
ていねいに羽根を折りたたまれて。

祈りに頭を垂れた場所にさえ、
荒々しい骸が、捨て置かれた。
足についた土を払うこともなく。



まるで魂を積み忘れた箱舟。

どの岸も見つけられないまま、
結局、この街と共に沈んでいくようだ。
地下室の床に、イコンを散らかしたまま。


雨はまだ降らない。
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by diamonds-pearls | 2004-12-08 00:57 | poetry