カテゴリ:music( 7 )

BUENOS AIRES HORA CERO (ブエノスアイレス午前0時)  / astor piazzolla


透明なエレベータで男が昇って行った。


夜は、

たぶん、何も映さない鏡のようで

街灯が照らす石畳の、その次の街灯までのわずかな暗闇に

たたずんでいた女の


黒く、

黒く、


濡れた髪を思いださせたんだろう。




外国タバコの、安く鼻に残る香りに

舌を絡めて

倦怠を味わった。


女の顔は覚えていない。

舌の渋味は何度でも、思い出せる。

それが証だったのだから。


ベッドの端に座って下着を付けた、その女の後姿を

灰皿の中に捨てた。

燃え残る火を苦い唾液で消した。





エレベータがフロアを過ぎる度

ワゴンから漏れる光が扉の影を

鳥篭のように映し出す。

夜の靴音が刻むtangoを

まどろっこしいlargoで包み込む、

感情のようなもの。



男が道の上にどさりと落ちた。
[PR]
by diamonds-pearls | 2006-06-19 01:30 | music

show biz kids / RICKIE LEE JONES

   


夜の憂鬱の中に

足を差しいれた。


やわらかな液体のような闇に

沈んでいく。


手足は

もう、私のものではない。

低いベースの音が心地よく。


そう、

もう、何も見たくない。


やわらかな液体のような孤独の中に

私は私を忘れていく。


夜の深い憂鬱の中へ。
[PR]
by diamonds-pearls | 2006-05-05 19:13 | music

musicolosy      PRINCE


線路の上をループする、この電車みたいに

毎日が上滑りしてゆくの。

くるっくるっくるっくる

無味乾燥な音を立てて、過ぎて行くだけ。


ガッコの帰りにレコード屋に寄る。

友達は 「私も」 ってついて来るけど

彼女の好きなアイドルグループなんて

そこの店には置いてないよ。

くるっくるっくるっくる

って、私は体を揺すって、確かめたいの。

私はいったい誰なのか。


いったいどこにいて、なにをしているのか。


だけど、くるっくるっくるっくるって

見えない指先で煙に巻かれて

いつも自分を見失ってしまう。



レコード屋の店員の男の子は

いつも私を見ている。

うそ。

私は分かってる。

ふとした拍子に目が合うのは

本当は、私がいつも見つめているから。



ねえ



人生なんて


音楽がなければ

ただ、黒いターンテーブルが回っているだけ。


迷子でいるのは、もう、いやだ。

あなたのその針で、私の音楽を鳴らしてよ。
[PR]
by diamonds-pearls | 2006-02-14 16:28 | music

te amo corazon      PRINCE




サテンのシーツが肌に冷たく、体温を奪う。

でも、女が肩をすくめるのは、そんな理由じゃない。

見慣れない風景だ、と感じているからだ。


重なる男の肌は、どうして誰も熱いのだろう。

さっきまで車をとばしていた砂漠を思い出す。



『ふたつの三日月にぶらさがって
道化が笑っている。

それは、あなたと私に似ていて
満ちることを知らない月』



吐息の向こうに、瑞々しい木々の匂いがする。

目をつむれば

わずかな風にこすれあう葉の音が、耳のすぐそばで聞こえる。

意識はそんな遠くにありながら

ただ、手さぐりで探し始めた。愛のようなものを。



けれど、いずれにせよ

オアシスを囲む石壁は、永遠を約束するものではない。



・・・・・te amo corazon


『あなたが欲しい。

その心臓の鼓動さえ、私のもの。』
[PR]
by diamonds-pearls | 2006-01-29 10:55 | music

SURVIVAL  /  Madonna

強くならねばいけない。


強くあらねばいけない、そんな局面に人生は時々出くわす。
しょっちゅうだな、と思わなくもないけども。

そういう時は、
ちょっと気分を変えてくれる友人にSOSして声を聞く。
それで救われる。

それから、内実を知ってる友人に聞いてもらう。
共感を得られて、救われる。

そして、ついには同じ立場にいる友人に相談し
解決策を具体的にする。
具体的にすることは、痛みがともなうから、一番後回し。

ただ一言、「助けて」と言えば終わる立場ではないから、
「助ける」のは私なのだから、
「助ける」ための強さを、私は欲しい。


「だれよりもか弱く見える命が
だれよりも強い母になれ、と突きつける」


防波堤になる。
どんな大きな津波にも負けない、しなやかな防波堤に、なる。
命をかけて。
[PR]
by diamonds-pearls | 2005-07-08 14:31 | music

LOVE DELUXE(album title)   /  sade

 
 パリにはいつも夜明け前に着いた。夜行列車で行くからだ。
パリの街はまだ真っ暗で、オレンジ色の街灯が道を濡れたように照らして、なまめかしい気がした。
NORD駅からEST駅へ向かって歩く。
誰もいない名もない通り。降りたシャッターのはげかけたペンキ。

冬。

夜明け前には、どんな裏切りも背徳も、祈りに似ている気がする。




静けさに人が、ささやく時。
[PR]
by diamonds-pearls | 2005-01-03 00:45 | music

MOTHER  /  police

 最近、抽象的なことに思いをめぐらす時間がなく、殺伐としていた。
夜、どうしても音楽が聞きたくなり、ヘッドフォンを持ち出した。Stingの「NOTHING LIKE THE SUN」。なんの期待もなく選んだCDだが、鳴った途端、あっけなく潤ってしまったことに驚く。
思考の鉱脈を掘り当てた気分。



 夜の音。
冬の朝の匂い、夏の夜の匂い、季節や瞬間にそれぞれ匂いがあるように、空間にはその時々の「音」が存在する。
夜に満ちているのは、ソプラノサックスやオーボエのような、木管楽器の少しくぐもった高い音。夜の遠いところから聞こえるように思うのは、耳の端でしか捕らえられないからだ。
曲ではない。ただ、音。

 ある男の顔。
高校生の時、岩波ホールで見た、映画「モリエール」の主演男優。フランスの前衛演劇「太陽劇団」の演出家が手がけた映画。ルイ14世時代の喜劇作家モリエールを描いた映画は、細部の汚し方が気に入っていた。
 衣装にじっとりと染み出す汗。砂漠の天蓋のようにはためく、粗末な舞台幕のサンドベージュ。
祭りの日、街頭で演じられる無言劇の、ガイコツのマスクで顔を包んだ役者の踊るような仕草。猥雑さと辛らつさ。

 その男を見ると、ろうそくの燃え止しの煙の匂いが鼻をかすめた。
祭りの終り。喧騒が過ぎて、けだるさの残る中、ひとつひとつ消されてゆくろうそくの、立ち上る一筋の煙。終息する狂気と、まだ冷めやらぬ興奮の入り混じった、一筋の細い煙。
本能的な恐怖と、抗いがたい魅力。




と、まあ、こういった感覚が、音楽を聴いているうちに溢れ出したのだ。
 以前、ドイツ中世の拷問道具についてのメルマガをやろうと企画していた。資料を探しているうちに、なんというか、モノが拷問だけに、痛いというか気持ち悪いというか、それに魅力を見出す人に(自分もそのひとりだけど)さらにウンザリしてしまって、ちょっと頓挫したままなのだ。
 また、最初はただの紹介文、あるいは拷問道具批評をしようとしていたのが、いつものごとく、思いをめぐらすうちに少しカタチを変え始めていた。
 そして、このモリエール役の俳優を思い出し、その打ち捨てていた企画に、瑞々しい潤いがあふれたのである。ただ、この鉱脈に本当に宝が眠っているのか、一鉱夫である私には知るよしもない。

ガイコツが笑っている。


 そのガイコツの笑い声が、policeの「MOTHER」である。
(やっと表題が出てきた)
Stingの印象の強いpoliceだが、一番好きなのは実はこの曲だ。

と、いう風に、曲の紹介や批評ではなく、そこから派生したイメージのようなものを書き止めてゆくのが、コンテンツ「music」なのである。
[PR]
by diamonds-pearls | 2004-12-20 02:19 | music